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近頃では、以後の事と以前の事を極力考えない精神修行の成果のためか、
長期的な展望や、物語の全体的な意味などを理解する能力が著しく減退し、
長文も一文一文単位で、俳句の連なりのようにしか読めないため、
小説や哲学はもちろんのこと、詩も読めなくなってきた。
それにつれて、短歌や俳句の味がわかりかけてきた。
前川佐美雄の「机の前のすすけた障子の桟の上に虫の死殻が三日ほどありし」とか、
尾崎方哉の「雀のあたたかさ握るはなしてやる」とか、たまらない。
以前は「だからどうしたんだ?」と思ったのだが、
その一瞬の光景に自足してしまえる、しまいたい精神になっている。

で、小説のネタがいくらか思いついたので、しばらくそれに取り組んでみることにした。
このままでは、長い話を書けるのはもうこれきりかもしれないので。
よって、更新は非常に少なくなると思う。
マンガがすべてひとコママンガに見える。
吾妻ひでおのマンガは、じっとひとコマを隅々まで眺めているのに適している。
ああ、絵で作られた俳句なのだな。