1001-01-01から1ヶ月間の記事一覧

川田絢音、その9

「発芽するものたちの臭い息に揉まれながら透明な時計が建築されている」(空の時間・9)僕がまったく個人的に、「建築モノ」あるいは「組み立てモノ」と呼んでいる分野のポエジーがある。例えば「ばらばらのストップウォッチもう一度組み立て直したら虹に…

川田絢音、その6

「半島が/レールが/炸裂した枝々が/乳房が/網が/白い皿が/翔ぶ!」(空の時間・6) さて、今回は、この詩の様々な変種をいくつか提示することによって、分析に代えさせていただきます。「四次元ポケットの設計図が/リトマス試験紙が/宝の地図が/油…

川田絢音、その5

「眼の空にせりあがる幾何学的な光景の中であたらしい溺死体を発見する」(空の時間・5)「監禁病棟」という映画で、「小さな子が電気の消えた暗闇で寝る時の恐怖。闇に潜んでいる何かがおそろしいから、灯りをつけるのも怖い。」と、語られる場面がある。…

川田絢音、その4

「呼ぶな/飛び交う黄色い百合を束ねるな/卵に聞き耳を立てるな」(空の時間・4)命令口調で、3つのことが禁止されているね。少々ムカつくけど、これは詩だから、我慢しよう。だけどもし、「無断で入るな/立ち小便するな/ゴミを捨てるな」だったら、空…

川田絢音、その3

「無垢な窓を/内へ/内へと/開け放って/悲鳴ははれやかに疾走しなければならない」(空の時間・3)「空の時間」でもとりわけ好きな詩のひとつで、川田絢音の詩人としての本領がいかんなく発揮されている一篇だと思う。ちなみに「悲鳴」は、第3詩集のタ…

川田絢音、その2

「素裸を曝してわなないている鏡の何処にでも鳩のように生える泉にくちづけを」(空の時間・2)鏡が素裸を曝すとは、どのような事態だろうか。「映し出す対象を衣服に見立てている」と考えれば、素裸とは、「何も映していない」状況だということが分かる。…

川田絢音、その1

「血いつも血/青が青いように/渇きで熟れるオレンジのひっきりなしの爆発」(空の時間・1)女性が「血いつも血」とか書いていたり、プールの授業を見学していたりするのを見ると、「花だ!紅い花だ!」とすぐに言いたくなるのが、補虫網を片手にした男子…

川田絢音、その0

「私の眼の中の果てしない真昼通りを行く私の眼の中の果てしない真昼通りを行く」(空の時間・39) 「私の眼の中の果てしない真昼通りを行く」のは、「私」なのか、「私の眼」なのか、あるいは、「私の眼の中の果てしない真昼通りを行く」なのか。もちろん…