川田絢音、その4

「呼ぶな/飛び交う黄色い百合を束ねるな/卵に聞き耳を立てるな」(空の時間・4)

命令口調で、3つのことが禁止されているね。
少々ムカつくけど、これは詩だから、我慢しよう。
だけどもし、「無断で入るな/立ち小便するな/ゴミを捨てるな」だったら、空き地の立て看板の文句だし、「おさない/かけない/しゃべらない」だったら、小学校の避難訓練時に用いられる、通称「おかし」と呼ばれる標語だから、注意が必要だよ。
思いついた禁止事項を並べ立てれば詩になる、というわけじゃない。
これくらいのことを言わなきゃ、詩とは呼べないんだ。言葉を選ぶのは大切だね。

さて、じゃあまず、「呼ぶな」から始めようか。
これは目的語が省略されているから、なにを呼んではいけないのかがよく分からないけど、おそらく、何を呼んでもダメなんだと思う。
キミがもし、マドハンドであっても、仲間を呼ぶことは許されないし、さまようよろいであっても、ホイミスライムを呼ぶことは許されない。勇者が率いるパーティーに、ボコボコにされるがまま、息絶えるのを待とう。
そして、キミがもし、カワイイ女の子で、強姦にあったのだとしても、大声で助けを呼ぶことは決して許されない。
モストデンジャラスコンビっていう、あんまりテレビ向きじゃなくて、もう解散してしまったお笑いコンビも、こう叫んでいる。「日本国憲法第〇×条!レイプされたら泣き寝入りしよう!」
あ、こんな話してたら、「チ、チンポがおっきくなっちゃった!(マギー審司の声で)」

次に、「飛び交う黄色い百合を束ねるな」。
「空の時間」は、タイトル通り、空が舞台になっている詩が多いんだけど、ここでは、黄色い百合が飛び交っているようだね。
黄色い百合の花言葉は「飾らぬ愛」(ちなみに、白い百合は「純潔」だそうだよ)。
デートの待ち合わせ場所へ行く途中、飛び交う百合を見て、「花束でもプレゼントしよう」と思いついても、束ねたりしちゃダメなんだ。多分、「飾らぬ愛で愛を飾る」っていうおかしなことになっちゃうからだと思う。黄色い百合ってちゃんと限定してあるのは、きっとそのためだ。
ところで、脱線するけど、黄色の色彩心理は「欲求不満」なんだ。
黄色い服を着ている女の人は、欲求不満だから落としやすいんだよ!これ、僕のお父さんの部屋にあった「女のひっかけ方」っていう本に書いてあったから、間違いないよ!

最後に、「卵に聞き耳を立てるな」。
妊婦の腹に聞き耳を立てるのは、セーフ。だけど、卵で子供を産むピッコロみたいなタイプの人は、うっかりしないよう、注意が必要だ。
さて、川田絢音の次くらいに好きな詩人の木坂涼が、「訪問」という詩を書いていて、「西瓜の部屋を/少し強く/ノックしたら/日照り続きでよく熟れた夏がお泊りです/と/返事がありました」って言ってる。
西瓜の場合は、丁寧な返事が得られるようだね。機会があったら、聞き耳を立ててみるといいよ。
でもきっと、卵の部屋の住人は、あまり温厚ではないんだろうな。ノックとかも、しないほうがいいよ。
なにか恐ろしいこと、おぞましいことを、中でひっそり行なっているに違いないんだから。
例えば、孵る準備をしているとかさ。こわいっ。

じゃあ、この詩の解説はこれでおしまい。
川田絢音空間に聳え立つ、この3つの禁止事項が書かれた立て札の裏に、「さもなければ・・・」なんて、おそろしい文句を付け加えることを考えて、震え上がるのも一興だね。
禁止事項を破った場合に下される理不尽な罰なんかを、みんなも考えてみようよ。
よい罰が思いついたら、お兄さんにも教えてね。
今日は、ここまで。バイバーイ!


恋愛中、あるいは性交中、相手と自分に望むことを命令形で箇条書きにしてみた詩。