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姉歯って苗字の人の店ってあるのかな。姉歯青果店とか。
「この野菜、生産地偽装だったりして?」とか面白くもない冗談を言われたり、「私は、ここでしか買わないから安心してね」と何故か訳知り顔の常連客に気の毒そうに励まされたりしてさ。店主も苦笑いするしかないっていう。
先月だったか、ひどく冷え込んだ深夜、二十四時間営業の東武ストアの二階の奥で、ホームレスのおじさんが寝ていたことがある。
それを見咎めた若い店員が主任を呼んで、追い払わせていたんだけれど、店外に放り出されたホームレスは、さっきまで枕にしていたリュックサックを冷静に探っていた。
極寒の中でホームレスは、屑篭から拾った新聞からの情報で、欠陥住宅でいいから住みたいと願ったりするのだろうか。耐震強度偽装住宅に泊まりたいと思うだろうか。
耐寒強度偽装疑惑のあるボロボロの服を着て、
耐酒強度偽装疑惑のあるボロボロの肝臓に負担をかけている僕は、
耐貨幣強度偽装疑惑のあるボロボロの財布からお金を出しながら、
「耐住人数強度偽装疑惑のある惑星は、定期的に戦争や飢餓や伝染病で人口の調整を図る」などと夢想したわけなのだが、夢想するという言葉にはもちろん無責任の側面があり、私はそれらに直接関与したくないという表明をしているにすぎない。
地球規模のエアコンとは言わずとも、大規模な公共の屋根が開発されればいい、と願ってやむ。
もちろん、そんな無知に基づく刹那な願いはすぐに終わるし、寒い夜は暖房の効いた部屋でビールを飲むに限るからだ。