「他流試合」金子兜太いとうせいこうを読む。俳人と散文家による俳句についての対話。
尾崎方哉の句集を読んで以来、俳句にも興味をもちたいと思い、
本屋に置いてある句集を出鱈目に手にとって立ち読みしてみたりもするのだが、
なかなか好きな俳人が見つけられず、うまくいかない。
そういえば、以前、「17音の青春」とかいうタイトルの、
高校生対象の俳句賞受賞作品集を立ち読みした際に、
「あかとんぼもいととんぼもとんぼでとぶよ」なる名句を見つけて、嬉しくなった。
とぼけた口ぶりで巧みに本質を言い当てている。
一見、昆虫図鑑的分類に関する言葉のトリックを皮肉っているかのようにも、
プラトンイデア論にも通じる不変不動の形而上学的実在としてのトンボの幻視のようにも思えるが、
そういうつまらない説明だけでは回収しきれない、人をどこか真顔にさせるような力を秘めている。
「とんぼでとぶ」て。
なんにしても、巧妙にして奇抜な発想で、こういった類の俳句ならどんどん読みたいと思った。
同じ作者の「ぺらぺらのたまねぎばねのあかとんぼ」っていう俳句もよかったし、
この高校生の俳句集が出れば買うんだけどなあ、などと。