完璧な日記

放置禁止区域に止めてあった自転車のマッドガードに「ユダ」と書かれていた。

昔、「プラウドマン」という名の競走馬が走っていた。誇り高い男が跨っていた。
中山競馬場の長い地下道。赤鉛筆を耳に挿んでいる典型的な中年の男二人が、大声で「やっぱ、プラウドマンコだよ!」「プラウドマンコくるって!」と話しながら歩いていった。丸めた競馬新聞で膝を叩いてリズムをとっていた。僕は、下を向いて低く笑い、将来は、あんな風になりたいと思った。陽気になりたい。

11日の夜、雑種君が部屋へ来た。主に人間について語り合った。会話をしながら、思いついたことをメモしていった。互いの排泄中に恋愛のことを考えた。

部屋。二人がジンを飲んだ。立ち上がり歩き出す際に枕元にある本棚に向かって転んだ。倒れることをやめない。本棚の抱き心地。置いてあったグラスを胸で押し出して、割った。破砕。
マグカップにジンを注いだ。コーヒーの味がうっすらとする。破片を摘まんでは、大きな破片の上へ積み重ねていく。賽の河原を模する。

テレビを見たことがある。野球も見たことがある。バーフィールド選手は外野にいたり、ベンチにいたり、打席にいたりした。とてもバットを振っていた。バットが描く軌跡に美少女の後頭部を配置したいと強く思った。
「でも巨人は強い」最後にそう叫ばれる詩をもう一度読んだ。筋ジストロフィー症が書く文字のひとつひとつ。

雑種君発言集。順不同。及び、うろおぼえ。「冷蔵庫が臭い」「お前がアスパラと言うから」「分かる気がする」「風呂の床がべとついている」

とんねるず、タカさん派?ノリさん派?俺、タカさん派」「ノリさん派」
以後、雑種君はノリさん派のひとりとしてカウントされる。

鼻の頭に大きな吹き出物を作った。私のオヤジギャグ傑作集。「メンチョウレータム、薬用リップ」

正しいことだけを言った。正しいことだと思った。

人が去っていった。新しい人間を過ごした。短く、「人間」、と、口にした。誰もいなかった。空のペットボトルがある。人間。

熱中知育五面体を赤ん坊が触っている。熱中知育ボックスというのもあるそうだ。

日本ハムを応援していたことがある。ハムエッグが好きだ。今は、伊藤ハムを応援している。