鵜呑み祭り

また、鵜呑み祭りが始まる。
活字が見える、
活字の姿が一字ずつ見える、
動かない、
増えていくだけの活字が、
自分を見ろと要求してくる、
新聞紙の切れ端が社会の一角の襟首を掴んで運んでくる。
人が死んだと伝えてくるので、

人が死んだのか、と思う。
鵜呑み祭りには違いない。
白痴の眼、白痴の認識。
扇風機があるぞ、扇風機だ、扇風機だ。
回せ、回せ。
あっちには乾電池だってあるぞ、
乾電池、乾電池、握りたい、その温度を確かめたい。
太陽が照らして

いる自然が、あちらこちらで口を開けているぞ、
その半開きの眼に、
うっすらと焼き付けろ。
眼球トースターだ、網膜版画展覧会だ。
小石の大小を嗅ぎ分けて、犬が歩いてくるぞ。
あれは、犬だ。
犬のことを犬と呼んでみたい欲望

が顕著だ。
地面がただ足下に拡がるばかり。
これはなんと言ったろうか。
鵜呑みしたい。名付けたい。鵜呑みしたい。
足場から生えている一塊の廃人の、鵜呑み祭り。