教えて!パパ!!

「ねえ、パパ? 酔っ払いってなあに?」


酔っ払いはあらゆることを口実に飲み始める
気弱で傲慢なきっかけ愛好症
口から顔を出そうとするふさぎの虫を噛み殺しながら
万象相手に乾杯することで万障をひととき忘れる
足元の覚束ない立小便の使い手
千鳥足で描く即興劇の果てで
便座を枕に記憶を無くす
くたびれ果てた旅人



「ねえ、パパ? ロリコンってなあに?」


自身の幼年期への愛執の投影
すべての人間に潜む宮崎勤宮崎駿な側面
互いに直立して向き合えば
キミたち小悪魔たちは
ボクたち大きいおともだちたちの下半身に抱きつくしかないだろう
彼女たちのその蠱惑的サイズから呼び起こされる
暴力衝動と性衝動の混沌への戸惑いから
滲み出るあらゆる意味での先走り汁オーナー



「ねえ、パパ? 時ってなあに?」


時は鳥類だから腕組みをしない
くるっぽーと鳴いては人々の心をついばんでくる
全景を時計回りに見遥かす風見鶏たちは
決して孵らぬ希望の無精卵を産み落とし続け
あらゆる不毛な動詞を律儀につかさどるばかり
文字盤の上を永久に飛び交い続ける燕たちは
自分自身を追いかけ続け
卵が先か鶏が先かと虚空に問いかけるばかり



「ねえ、パパ? 神さまってなあに?」


神さまは熱狂的なサイン魔
色紙だけでなくあらゆる事物に自分の痕跡を残す
人見知りの人間好き
人目につかない場所で人目を気にしている無神論
空の賽銭箱に狙いをつけた賽銭泥棒のように
頭蓋の虚無を漁り続ける発光する手の残像
光と闇が器官の神さまは矛盾語法を振りかざし
世界の隅々に固有の症状を与え続ける